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のボランタリー・セクターが存在しているのであろう。現在のイギリス人はかつてほど熱心には教会に通わなくなったと思われるが、キリスト教あるいは宗教が育んできた精神あるいは文化のようなものを維持している人は多いように感じられる。
第2に、組織の自立性は財政上の自立性によって担保されることはいうまでもない。この点については、すでに述べたように、ボランタリー・セクターの収入の多くを占める公的セクターからの財政支援がとりわけ自治体レベルで減少しており、かつてない厳しい状況にあるとはいえ、公的セクター以外からの財政支援や寄付によってそれを補う以外にない。イギリスの特徴の1つとして、収益事業による財源確保という方法が規模の大きな団体では一般的であることがあげられよう。そのような意味において、ボランタリー・セクターの高い自立性は財源の多様性に求められるかもしれない。
第3に、ボランタリー・セクターにおける団体間の複雑なネットワークが指摘されなければならないだろう。アンブレラ組織についてはすでに説明したが、多様なボランタリーオーガニゼーションが多様なネットワークを構成しており、全国レベルのアンブレラ組織も複雑である。日本でも地域レベルの団体が県レベルの団体に統合され、それが全国レベルの団体を構成するという重層化は見られるものの、複数のアンブレラ団体に加盟することは少ないのではないだろうか。その意味では一元的な仕組みが維持されており、ネットワークとしてはそれほど複雑ではないと考えられるが、イギリスの場合には1つの団体が複数の団体に加盟して複雑なネットワークを構成している、このネットワークの強さがボランタリー・セクターとしての自立性、そしてそれぞれの団体の自立性を強化していると考えられる。
第4に、これと関連して、人的構成のネットワークも指摘できよう。ボランタリー・セクターの様々な団体には常勤スタッフを抱えているところが一般的であり、多くは有給である。もちろんパートで働く人々や無給の人々もいる、したがって、イギリスでのボランティア活動を無給あるいは無償労働と考えるのは適切ではない。日本ではボランティアが無給・無償と考えられることがしばしばあるが、その場合には無給・無償の意味が曖昧になるケースが多い。有給休暇制度の1つとしてのボランティア休暇制度ははたして無給であろうか。実費の支給は無給に含まれるとしても、食事の提供はどのように考えるべきか、無償のボランティアを否定するわけではないが、ボランティアを無償と考えることは現実には機能しないと考えられる、イギリスの場合に戻ると、自治体からの財政支援の中には常勤スタッフの人件費を組み込んでいるものが多くあり、そのことが人材面での豊かさを

 

 

 

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